ゴンザレスの備忘録

ビットコイントレード、起業への道、映像関係、その他備忘録、といった内容で書いていきます。

MENU

HDRがなぜ暗く感じるのかを技術的に考察した。

テレビの規格にHDR(High Dynamic Range)というものがあります。

これは今地上波テレビで放送されている映像(SDR:Standard Dynamic Range)よりも広いダイナミックレンジの映像を見ることができるという規格です。

 

ここでいうダイナミックレンジとは何かというと、テレビ画面に映る一番暗い部分の明るさと一番明るい部分の明るさの差のことです。

 

つまり、「SDR規格の映像の一番暗い部分と一番明るい部分の差」よりも「HDR規格の映像の一番暗い部分と明るい部分の差」の方が大きいことになります。

 

最近、HDRについて調べていると以下のような記事を見つけました。

tokusengai.com

 

技術の高度化と人間の感じ方の良し悪しについて奥深さを感じながら一方で、この現象について技術的に思考実験して考察しようと思いました。

 

先に端的な結論を書いておいて、その下で原理的なところについて説明します。

 

 

結論

SDRでは0〜100nitまでの明るさをデジタルコードにマッピングし、HDRでは0〜1000nitまでの明るさをデジタルコードにマッピングしたとする。そして、これを1000nitが最大の明るさであるディスプレイに同じように表示しようとすると、「HDRでは元の0nitはディスプレイ上では0nitで、もとの1000nitはディスプレイ上では1000nitとして表示される」のに対し、「SDRでは元の0nitはディスプレイ上では0nitで、もとの100nitはディスプレイ上では1000nitとして表示される」ので、同じディスプレイでSDR映像とHDR映像を見た場合は、HDR映像の方が暗く見える。(逆に言うとSDR映像が明るく見える。)

のではなかろうか、というのが私の結論です。

 

テレビ映像の伝送について

テレビカメラで撮影した映像がどのような変遷でテレビに表示されるのか概観します。

f:id:gonzales1919:20190406175506p:plain

カメラに入射した光は、赤(R:Red)・緑(G:Green)・青(B:Blue)の光に分光されて、それぞれ光の強さに応じた電圧に変換されます。この電圧がガンマ逆補正(逆ガンマ補正、逆ガンマ変換)と言われる変換をされます。

 

これが諸々の処理を経て電波となり、各家庭に届きます。そして各家庭のテレビに入力され、電波からビットコードが取り出されます。(この部分についての説明は本記事では割愛します。)

 

テレビ側では、ガンマ補正と言われる変換をした値に応じた明るさでテレビ画面に表示します。

カメラに入射した光とガンマ逆補正

カメラに入射した光のレベルは、そのまま生の情報として伝送されていく訳ではありません。ガンマ逆補正という変換のかかったレベルを伝送していくことになります。

カメラに入射した光のレベルとガンマ逆補正後のレベルの関係のグラフを下に示します。「ガンマ逆補正後の値 = カメラに入射した光のレベル^(0.45)」としています。

このグラフの横軸の数値は正規化後の数値であることに注意してください。正規化とは、一番低い部分から一番高い部分までの値がすべて0〜1の間に収まるように変換することです。つまり、横軸の1はSDR規格では100nit、HDR規格では1000nitに該当すると理解してください。(順番が前後しますが、前提を思考実験の項に書いています。)

f:id:gonzales1919:20190406181235p:plain

この変換をすることによって、後段でデジタルデータに変換する際に暗い部分のデータを多く残すことができます。ガンマ逆補正は、人間の目が暗い部分の明るさ変化に敏感で、明るい部分の明るさ変化には鈍感であるということから、暗い部分のデータをより多く残すことに繋がる理にかなった変換です。カメラに入射した光の0〜0.5が変換後では0〜約0.75に割り当てられています。これは、もともとの最高の明るさの半分よりも暗い部分の情報が、変換後では全体の情報量の4分の3を占めることを意味します。(これがなぜ暗部の情報を多く残すことに繋がるのかは別の記事で解説します。)

 

※ここまで、光のレベル、明るさといった表現を用いていますが、機械の中ではこれらは電圧で扱われています。

 

テレビ側でのガンマ補正とディスプレイにおける明るさ

ガンマ補正後のレベルを受け取ったテレビは、今度はこれをガンマ補正してディスプレイに出力します。その関係をグラフに示します。

「ガンマ補正後のレベル = テレビに伝送された値^(2.2)」としています。

ここでまた注意しなければならないのは、縦軸(ガンマ補正後のレベル)はディスプレイが出力できる最大の明るさで正規化されているということです。つまり、最大の明るさが100nitのディスプレイにとってみれば1は100nitであるし、最大の明るさが1000nitであるディスプレイでは1は1000nitを示すということです。

 

f:id:gonzales1919:20190406181425p:plain

 

思考実験

SDR規格とHDR規格それぞれについて順を追って考えてみます。

前提として、カメラに入射する光は0nit〜1000nitの光。SDR規格のカメラは100nitより明るい光は白飛びしてしまってデータにできない(100nitとして扱う)とします。もっと分かりやすく言うとSDR規格では100nitを最大の明るさとしそれ以上の明るさは全て100nitとして扱います。HDR規格のカメラが受け取ることができる最大の明るさは1000nitとし、今回の前提出ある0nit〜1000nitの光をすべて受け取りデータ化するものとします。

SDR規格における100nitは、カメラに入射してガンマ逆補正され、1としてテレビに到達します。テレビの最大の明るさが100nitであれば、この1という数値はガンマ補正によって100nitとなってディスプレイに出力されます。しかし、テレビの最大の明るさが1000nitだった場合、1という数値はガンマ補正によって1000nitとなってディスプレイに出力されます。

今度はHDR規格について考えます。HDR規格における1000nitはガンマ逆補正によって1に変換されます。また、このとき同時に100nitは1000nitを最高の明るさとして正規化すると0.1なのでガンマ逆補正によって約0.35としてテレビに到達します。テレビの最大の明るさを1000nitとすると、ガンマ補正によって約0.35は100nit、1は1000nitとしてディスプレイに出力されます。

 

まとめ

騙されたような感じがするかもしれませんが、HDRがなぜ暗く見えるのか、逆に言うとSDRがなぜ明るく見えるのか、ということを順を追って見ていくと上記のような原理があるのではないかと考えます。

また、私はHDR映像とSDR映像を見比べた訳ではなく思考実験によってこの現象について考察したという点をご留意いただければと思います。

間違い等あるかもしれませんが、そのあたりはご指摘いただけると私の勉強にもなりますので、よろしくお願いいたします。